トレーニングメソッドの流行

インターネットをはじめ様々なメディアが発達し、我々が従事させて頂くスポーツ医科 学に関する分野にもスポットが当たる事が少なくない昨今では、「○○トレーニング」「××マシン」など、特定のトレーニングメソッドやトレーニングマシンが大きく取り上げられることも少なくありません。ましてや、それがトップアスリートや芸能人の方々が行っているとなればなおさらです。しかし、トレーニング指導専門職としてここで改めて考えていただきたいのは、

「あなたは、そのトップアスリート(or 芸能人)ですか?」

ということです。その特殊な器材を使うだけで、あなたは世界で活躍するアスリートになれるのでしょうか? その特殊な方法論を用いるトレーナーさんに付くだけで、あなたは銀幕の大スター(ちょっと古い表現でしょうか)になれるのでしょうか?

トレーニング指導者なら誰もが学ぶ基本的な原則の1つに、「個別性の原則」というものがあります。文字通り、ヒトの身体は千差万別(もちろん、同一種の生物としての最低限の共通項はありますが)なので、個々人それぞれの特徴や目的を考慮したトレーニング処方と指導が必要だという原則です。だからこそ、1on1のパーソナルトレーニングなども成り立つわけですし、逆に集団指導においても個々の選手やクライアントさんに目を配る必要があるわけです。イチロー選手にはイチロー選手の持つ心身の能力や特徴があり、トレーニングの目標があります。AKBにも個々人それぞれの個性や目標があることでしょう。その上で、それぞれの現在に合ったトレーニング方法を模索していった結果、現在の方法やトレーナー/トレーニングコーチにたどりついたはずです。ですから、当たり前ですが AKBと同じトレーナーさんを雇ったからと言って、それだけであなたはAKBにはなれませんし、突然スカウトされるということもありません(笑)。「同じようなエクササイズをしたい!」とリクエストするぐらいは可能かもしれませんが…。

さらに言えば、何か特殊なトレーニングを行うにはそのための土台として、基本的なトレーニングを身につける必要があります。スクワットのフォーム一つ上手にとれないのに、何百万もする特殊な器材でエクササイズしてもおそらく効果は期待できないでしょうし、自分の体重すら満足に支えられないのに、マシンに座って「100kg挙がった!」などと言っても、求める身体機能は改善されていない場合がほとんどでしょう。

実際、トップアスリートの方々のトレーニングを見ても、大部分は「地道なエクササイズ」を黙々と積み重ねていることが多いようです。ましてや、遠征先などでは特殊なマシンなどは望むべくもありませんから、ベーシックなトレーニングをいかに大切に、継続して行えるかが重要になってくるわけで、ちょっと特殊に見えるトレーニングなどはあくまでもそれらを踏まえた上でのスパイスのようなものにすぎません。

私が先輩方から教わった好きな言葉の一つに、「KISS の法則」という言葉があります。“Keep It Simple Stupid”の頭文字を取ったもので、(トレーニングは)バカバカしいぐらいシンプルに、でもしっかりと継続してやっていこう”という意味であり、それこそが結局は目標への近道なのだという法則(?)を表してくれています。上述のトップアスリートの例などはまさにこれを地で行っていると言えるでしょう。残念ながらメディアで報じられることが多いのはシンプルなものではなく、スパイスに過ぎない一見特殊なものばかりですが...。

あなたは、イチローでも AKBでもありません。だからこそ、トレーニングは「あなたが主役」です。メソッドや機器材に合わせるのではなく、あなたに合った、あなたの未来(Future)のためのベーシックで基本(Fundamental)に則ったトレーニングを見つめてみませんか? エフ・フィットネスサポーの“F”にはそんな願いも込めさせて頂いています。