【トレーニング格言シリーズ⑥】Do the little thing

 今回のコラムは、久しぶりの『トレーニング格言シリーズ』です。

 国内外の著名な指導者やトップアスリート、さらには身近な先輩といった方々が残してくださった金言・格言は沢山ありますが、中でも今回のひとことは個人的にも好きな言葉になります。
 それはずばり、

 Do the little thing.

 日本語にすれば、「小さなことこそ、(しっかり)やっていこう」。

 トレーニング指導員として、この言葉をあらためて意識させられたのは、あの松井秀喜さんが現役時代、何かのインタビューで答えているのを目にしたときでした。
 じつは同い年(!)の松井選手(当時)は、ご存知の通りベースボール・プレイヤーとしてはもちろん、メディアへの真摯な対応をはじめとした人間性の部分でも多くの人々から尊敬されており、後に国民栄誉賞も受賞されたスーパーアスリートです。
 それほどの選手が、「心がけていることは?」という問いに対して、

「英語でいうところの、Do the little thing.です。練習とかトレーニングって、一朝一夕に成果が出ることはないけど、薄い紙を積み重ねるようにコツコツとやっていけば、いつかはそれが分厚くなるはずですから」

 といったようなことを答えていたのが、とても印象的だったのです。  同じようなことは、サッカーの岡田武史氏も常々仰っていて、「勝負の神は、細部に宿る」という氏の言葉がよく知られています。  

 運動や身体の専門家、と聞くとどうしても、「(すぐに)脚が速くなる方法はありませんか?」、「1ヶ月で体重を5kg減らしたいんです」のようなご要望を頂くことは多いですし、残念ながらメディアもそうした謳い文句で様々なグッズやメソッドを宣伝しがちです。
 でもきっと、誰もがわかっているはずです。「Do the little thing.」こそが一番の近道なのだということを。

 先日、指導先の部活の生徒が、トレーニング目標に書いてくれていました。

 Do the little thing. と。

 そして、それを見た顧問の先生がひとこと。

「伊藤さんの息子がいますよ(笑)」

 思わずにんまりとしてしまう、ひとときでした。